スパンアートギャラリー

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ゴシックな暗黒舞踏家-土方巽-

種村 品麻

 私は現在銀座でスパンアートギャラリーというギャラリーを経営している。ギャラリーというのは、各々そこの傾向というものがあり、例えばそれが現代美術に強いところであったり、彫刻に力を入れていたり、物故作家のコレクションをたくさん持っていたりと千差万別である。スパンアートギャラリーは敢えてそのようなジャンルに落とし込むならば、幻想系、耽美系、エロチズム、異端といったことだろうか。
 今でこそ私たちが取り上げる過激なエロチシズム、エログロ、異端などは、スパンアートギャラリーが開廊した1995年当時は展示するなど考えられないことだった。その様な展覧会を開催する画廊は皆無に等しく、それ以前に画廊とは認められない存在とされていたに違いない。しかし少し視点が違っていれば、それは時として反響を呼ぶ展覧会になることがある。これは2001年の夏に「土方巽」展を開催した時のことだ。土方巽とは暗黒舞踏の先駆者で、ダンスの中に地方の土着性を取り入れて、自分自身の個性と直結する作品を肉体で表現する舞踏家である。かれは、青森県出身で、その東北に古くから根付いている精神をイメージ化しながら、肉体を幾重にも駆使していく。それは死者が蘇った魂から発するかのごとく、何かを自分の中に呼び込み、何かを訴え、何かを具体化していくといったようなどこか儀式的なものが見て取れる。その彼の媒体を写真や書簡といった資料、舞台美術、土方が昇天した後に彼の本物の足から型をとり、オブジェ作品にしたデスフット、1968年当時八ミリフィルムで中村宏が撮影した「肉体の氾濫」等をビデオで流した展覧会は、予想以上に若い世代が画廊に足を運んでくれた。かれのダンスは東北人独特の土着性は、もちろんのこと、そのストイックな肉体からにじみ出る彼自身のエロチシズム、そしてダンスから表現される舞台空間の中のシュールレアリスムが相重なって土方作品を作り上げる。いわば平面や立体から作品的イメージを発信させるのではなく、人間そのものから発信されるといった非常に原点的な作品である。このスタイルはある意味従来の美術という既成概念を破戒した行為と言っていいであろう。そういう意味で土方は舞踏家であり美術家であり、自分に対する演出家であるといえよう。
 土方巽はまた映画にも出演している。それは江戸川乱歩原作で監督が『網走番外地シリーズ』からエログロ路線へ移行した石井輝雄の『恐怖奇形人間』というものである。ここで土方はどのような役をしたかというと、誘拐した男女たちを奇形人間にし、島に自らの理想郷を作ろうとしていたまるでショッカーさながらの丈五郎という男の役である。まさにこの映画に欠かせない登場人物で、そのポジションとしては仮面ライダーにでてくる怪人くらいに重要なところである。つまり、この丈五郎がいなくては、この映画が成立しないのである。この異端の中の異端というべき作品は、俳優土方巽を語るに十分である。
 この作品は、際立った暴力シーンやセックスシーンがないにも関わらず、内容の過激さから「R-18」指定にされた。また、もちろんDVDなどのソフト化も叶う訳がなかった(アメリカでは2007年にソフト化された)。私も今は無き大井武蔵野館で見ることができた。確かこの大井武蔵野館で上映して以降は、どこでもされてないと思う。この映画を見れたことに非常に感謝するとともに幸せと感じている。
 さて、最初にも述べた通り、私どもの画廊はエロチズムや耽美、異端、幻想などといったおよそ一般的でない作品を主に展示しているのであるが、そのような作品は、企画展示以外だと画廊の奥に本やグッズを扱っているスペースがあり、そこで展示している。また、飾ってはいないものの保管してある作品(オリジナル作品以外のものも対象としている)もあり、丸尾末広、山本タカト、トレヴァー・ブラウン、宇野亜喜良、佐伯俊男などゴシックな作家のものが一堂にお見せできるので、是非御来廊していただきたい。それでは、皆様お待ちしております。

 

 

ミステリマガジン 2012年12月号(早川書房) 掲載原稿より

 

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